保険コラム

医療事故だけではないリスク ~自動車保険の話

2018.12.01

  以前、このコラムでは、次のような事例を取り上げました。医療機関から個人情報漏えいがあった場合、漏えいを起こした従業員だけではなく、医療機関としても損害賠償責任を負う可能性があること。また、医療機関内でセクシャルハラスメントが発生した場合、行為者が従業員であっても被害者から医療機関も訴えられる可能性があること、などの事例です。

 医療事故が発生した場合、事故を起こした行為者とともに医療機関も賠償責任を負うのは、上記の事例と同様に使用者責任を問われるからです。

 それでは、医療機関の従業員がマイカーで以下のような事故を起こした場合、医療機関は使用者責任を負うでしょうか。

1.業務中の事故

   医療機関の取引業者への支払のため、従業員がマイカーを使用して銀行に行く途中、横断歩道上で歩行者と接触事故を起こした。

2.日常生活での事故

   従業員が休暇に家族と旅行中、ホテルの駐車場内で、運転中の他の宿泊者の車に追突した。

3.通勤途上の事故

   従業員が出勤途中に自転車通学中の高校生と信号機のない交差点で出合い頭に衝突事故を起こした。

 どの事故も相手側はケガを負う被害が生じており、運転していた医療機関の従業員には損害賠償責任が生じたが、従業員の自動車保険は、保険金額が不足し、被害者へ全額賠償できず、使用者である医療機関が被害者から賠償請求を受けたと仮定します。

1は、医療機関の業務と関連があり、従業員が日常的にマイカーをその職務のために使用していたとすると、医療機関の使用者責任は免れないと考えられます。

2は、従業員が休暇中のプライベートな出来事であり通常は業務との関連性は認められず、使用者責任が問われることはないと言えるでしょう。

3は、過去の判例では、使用者が従業員のマイカー通勤を認めているか否か、通勤に係る費用を負担しているか否かなど、いろいろな事情を考慮して使用者責任の有無が判断されているようです。

 マイカーの業務使用や通勤を認めている医療機関は、使用者責任にまで問題が発展しないよう、念のため、従業員の自動車保険の契約内容(対人賠償や対物賠償の保険金額)を確認し、万一事故が発生しても被害者に対して十分な補償ができる自動車保険契約を締結することを就業規則等に定めておくことをお勧めいたします。

 

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