医療事故だけではないリスク ~民法改正と損害賠償金の話
2020.02.01
国内の銀行金利が下がり始めて約30年が経過しました。日銀の公定歩合(現在は基準貸付利率)(注1)は1990年8月の6%から2001年9月の0.1%まで下がり続けました。
金融機関の金利(長期プライムレート)も2000年以降は2%前後から直近では1%前後という水準まで下がっています。住宅ローンの金利も下がり、これからマイホームを所有したい方にとっては、金利面では非常に良い環境にあるように思います。
さて、世間ではあまり喧伝(けんでん)されていませんが、今年は民法改正が行われ、国民生活のルールが変わる重要な年です。民法は制定以来、約120年間ほとんど改正されておらず、社会の変化に応じて条文を見直す必要が出てきました。
その一つが法定利率の改定です。上記のとおり、現在、市中金利が大幅に下がっているため、法定利率も見直しされます。今年の4月1日以降、法定利率は現行の5%から3%へ引き下げられます。
これにより、損害賠償金の計算が大きく影響を受けることになります。交通事故や医療事故などで被害者が死亡した場合、加害者は損害賠償金として、①慰謝料、②逸失利益、③弁護士費用、④遅延損害金等を支払う必要があります。
②の逸失利益とは、被害者が将来得られたであろうと考えられる利益です。例えば、被害者が死亡した場合、死亡時から一定の年齢まで働いて、収入を得られるとして逸失利益を計算します。
賠償金は通常一時に支払われます。被害者は、逸失利益のように将来得られる金銭を今現在、一時金で受取ります。賠償金を計算する際、受取り後は運用益が得られると考え、その運用益を差し引きます。これを中間利息控除といいます。
中間利息控除を計算する際の利率を民法改正により5%から3%に変更します。つまり賠償金から差し引かれる中間利息控除の金額が少なくなるので、賠償金は逆に増えることになります。
22才の男性サラリーマンが死亡した事例では、民法改正により賠償金は約2000万円増加します(注2)。被害者が後遺障害1級の場合など、将来の介護費用も加わり、賠償金は1億円を超える例もあります。賠償金が多額になると、このように民法改正により増加する金額はより大きいものとなります。
医師賠償責任保険は、自動車保険の対人賠償と異なり、無制限という保険金額は設定できませんが、万一のため、少なくとも1億円以上の設定をするようお勧めいたします。
(注1)出典:日銀ホームページの基準割引率および基準貸付利率(従来「公定歩合」として掲載されていたもの)の推移公表データ一覧
(注2)出典:法務省ホームページ「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」に掲載されている「重要な実質改正事項」から「法定利率に関する見直し」を参照
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