医療事故だけではないリスク ~認知症患者の監督義務のお話~
2016.04.01
平成28年3月1日に世間の関心を集めた認知症患者の鉄道事故に関する最高裁判決が出ました。
認知症患者が徘徊中に列車にはねられ死亡した事故について、鉄道会社が患者の家族に約720万円の損害賠償を求めた訴訟で、患者の妻や別居の長男には賠償責任はないとする判決でした。新聞報道などによると判決の要旨は次のとおりです。
- 責任無能力者(小学生以下の子どもや精神障害者など)の賠償責任は、監督義務者が負う(民法714条)ものの、保護者や成年後見人だからというだけでは監督義務者には当たらない。
- 監督義務者に準ずるかどうかは、責任無能力者との親族関係、同居の有無、介護の実態などを総合考慮すべき。
- 患者の妻自身要介護認定を受けていた。長男は20年以上同居していない。両者とも患者の加害行為を防ぐための監督義務者ではない。
したがって、患者の妻と長男には賠償責任なしとしています。
今回の判決は、認知症患者の家族にとって温かみのある判決との評価の一方で、ある研究者がこの判決により、以下のような新たな問題点が浮かぶことを心配していました。
- 今回の事故とは事情が変わり、認知症患者が自転車に乗って歩行者と衝突し、歩行者が死亡するような事故が起きた時に果たして監督義務者はいないという認定がされるのか。
- その場合、損害賠償を受けられない被害者は泣き寝入りしてしまわないか。(犯罪被害給付制度の対象になるかもしれません)
- 積極的に認知症患者の介護にかかわる家族が監督義務者となり、万一事故が発生した場合、加害者としての責任を負い、介護をしない親族が(いたとすれば)責任を負わないで済むという矛盾は発生しないか。
もしも上述の自転車と歩行者の衝突のような日常生活の事故で北海道医師会会員の先生が被害者となった場合には、グループ保険の傷害保険があります。逆に加害者家族として賠償責任を負うことになってしま った場合、傷害保険オプションで賠償責任保険を用意しています。
その他、北海道医師会では、被害事故にあった場合に弁護士への相談費用・委任費用をカバーする新制度「弁護のちから」と従業員が就業中に被害に遭いケガをした場合を補償できる新制度「医業経営ガード」を近く発売することを検討しています。
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