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医療事故だけではないリスク ~火災と賠償責任のお話~

2017.08.01

昨年12月に発生した新潟県糸魚川市の大規模火災で、警察は火元となった料理店の店主を書類送検したとのニュースを目にしました。それによると料理店の店主は、鍋に火をつけたまま店を離れ、店に戻った時には火が出ていたといいます。折からの強風により火災は拡大していきました。

大火になるかどうかは、ときの天候や消防設備の有無などに左右されますが、日本では木造の家屋も多く、古来、各地で大火が発生しています。道内では函館で明治期に幾度も大火が発生しており、昭和には岩内でも起きています。

さて、今回の糸魚川大火の被害は甚大ですが、次のような場合、火元の料理店の店主は、火災の被害者に対して損害賠償をしなければならないでしょうか?

1仮に料理店の店舗が他人から借りた建物だった場合、その建物の所有者が火災の被害者になりますが、建物所有者に対する損害賠償

  2 料理店の火災で直接被害を受けた隣家、またはその火災の延焼により被害を受けた、全ての建物や車両の所有者に対する損害賠償

まず、1の場合、借主である火元の料理店の店主は、貸主に対し、借りた建物について現状を回復して返還しなくてはならないと考えられます(民法415条債務不履行責任)。次に2の場合、火元の店主は、被害者に対して損害を賠償しなければならないかもしれませんし(民法709条不法行為責任)、賠償しなくてもよいかもしれません。

火災が原因となる損害賠償は、やや複雑です。日本には失火責任法という法律があり、失火の場合は民法709条を適用しない(但し、失火者に重過失がある場合を除く)旨の規定があるからです。

過失による失火の場合は、民法709条の不法行為責任を負いませんが、重過失の場合は責任が生じますので、それでは、重過失による失火とは何かということが問題になります。過去の裁判では、重過失と認定された失火の事例は多々ありますが、個々の状況が異なるので、重過失とは、このような失火であると断定することは難しいと思われます。

上記のとおり、失火責任法により失火者が損害賠償責任を負わないこともあり、また、仮に重過失のため賠償責任ありと認められた場合でも、火災による被害額は巨大なことが多く、賠償を受けられるかどうか不確実です。やはり、火災保険で自己の財産を守ることが確実な方法です。 

民法415条:債務者が其債務の本旨に従いたる履行を為さざるときは債権者は其損害の賠償を請求することを得(以下、略)

民法709条:故意又は過失に因りて他人の権利を侵害したる者は之に因りて生じたる損害を賠償する責に任ず

失火責任法(失火の責任に関する法律):民法第709条の規定は失火の場合には之を適用せず 但し失火者に重大なる過失ありたるときはこの限りに在らず

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